【column】 夏を元気に乗り切ろう!
2022.08.01
|
暑い夏も猫はへっちゃら?
暑い夏でも日向でゴロンと寝転がる猫を見かけます。こんなところでお昼寝して、熱中症になっちゃうんじゃないかしら、と心配になってしまいますよね。
我々が今一緒に生活している「イエネコ」は北アフリカやアラビア半島の砂漠地帯に多く住んでいるリビアヤマネコが祖先と言われています。そのため、猫は概ね暑さに強く、寒さに弱い動物とされています。とはいえ砂漠地方は、日中40℃に近い温度まで上昇するものの湿度が低いため、日陰に入ると案外カラっとしています。
しかし日本の夏は高温多湿。湿度が高い上、気温が35℃を超える猛暑は、夏でも毛皮をまとっている彼らにとって、やはり暑すぎる環境と言わざるを得ません。
また、ノルウェイジャンフォレストキャットなど、寒い地方出身の猫たちは、寒さに強く暑さに弱い傾向にあります。あのもふもふの長毛が体表面からの放熱を邪魔するので、他の猫種よりもエアコンの設定温度は低めにした方がいいでしょう。
夏に強いカラダつくり
夏に負けない強いカラダを作る、なんて猫にできるの?とお考えになられるかもしれません。 でも、いくつか方法はあります。
まず、筋肉量を落とさないようにすること。筋肉量が多いと代謝が良くなるだけでなく、水分保持量も増加します。カラダ全体で保持できる水分量が増えることは、暑さに強いカラダつくりに非常に役立ちます。また、筋肉量が多いと活動性も上がりますし、ある種のサイトカインの分泌が促進され、ストレス解消にも役に立つと言われています。
そして、消化の良いごはんをあげること。 気温が上がると消化機能が落ちてきます。だからといって、食事量を減らすことはオススメできません。食事量の低下→体重減少→免疫力の低下、は夏バテを招きます。 ウェットフードの量を増やしたり、あまり水を飲まない子には出汁やスープを薄めてあげたりしてもいいでしょう。
また、この時期に急にごはんを変更したり、今まで食べたことのないものをあげるのはやめておいた方が賢明です。 今年の夏の始まりには、例年以上に胃腸炎を訴える猫ちゃんが多く来院しました。食べることは生きること。食生活からカラダを整えてあげましょう。
猫も熱中症になる?
犬よりは少ないとはいえ、猫も熱中症になります。特に体温調節機能が落ちたシニアの子たちに多く見られます。 冷房の設定温度は26〜28℃程度でいいと思いますが、扇風機などで空気の流れを作ってあげることも重要です。また、冷房のついている部屋のドアを開放し、あまり冷房が効いていない部屋へ移動できるようにしておくといいでしょう。
猫たちは自分が今求めている環境を良く知っています。その時々に快適な場所を求めて移動しますので、温度勾配をつけておいてあげるのも大切なことです。 また、できれば湿度は50〜60%程度に抑えておきたいところです。
熱中症の初期には耳や四肢の先端が熱くなり、呼吸数が増えてきます。開口呼吸、嘔吐、下痢、血尿、さらに進むと痙攣、起立不能といった状態に陥っていきます。 異常が見られたらすぐにかかりつけの動物病院に連絡しましょう。同時に体温を下げる処置を行います。濡れたタオルで全身を覆い、扇風機などで風を送り、場合によっては脇、首、股に保冷剤を挟んでもいいでしょう。
ただし、冷やしすぎ=体温の下げすぎには要注意です。かえって事態を悪くする可能性がありますので、どこまで冷やすのか、その判断も含めて獣医師に判断を仰いでください。
今年の夏は酷暑となりそうです。少しでも涼しく快適に、健康で元気に乗り越えていきましょう。
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。