【column】 食欲の秋、到来! わんこの味覚を知る
2022.10.11
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食欲の秋、到来!
実りの季節であるこの時期は、旬を迎えた美味しいものがたくさん収穫されるので、ついつい食べ過ぎてしまいます。
ところで、犬にも「味覚」がありますが、どうやって味覚は決まるのでしょう?
「味」は舌の上にある味蕾細胞が信号を受け取ることで発現します。ヒトにはこの味蕾細胞がおよそ10,000個存在していますが、犬には約2,000個程度しか存在していません。
またヒトの場合、舌のどの辺りでどの味覚を感じるか、いわゆる味覚地図と言われるものが明確にわかっていますが、犬の場合ははっきりしていません。
犬は「甘味」「苦味」「酸味」「旨味」を感じることができ、特に「甘味」は強く認識します。
中でも果物に含まれる果糖、砂糖に含まれるショ糖に強く反応するのは、犬が肉だけでなく、甘い果物なども食料として摂取し生き抜いてきた、雑食動物であったことを示唆しています。
逆に「塩味」は多少感じるものの、それを感じ取る味蕾細胞の数が少量しか存在しません。
これは、雑食動物として進化してきたものの、肉をメインとして食していたことを示しています。 野生環境で獲物を捕らえた時、彼らは血液や内臓なども含め全ての肉を食します。
血液や体液には塩分が含まれていますので、肉をメインとした食生活を送っていれば塩分が不足することがなかったため、と考えられます。
「嗜好性」ってどうやって決まるの?
犬もしっかり「味」を感じていることがわかりました。では「嗜好性」はどうやって決まっていくのでしょう?
犬の味覚神経は、生まれた瞬間から舌の刺激に反応することがわかっています。つまり子犬は生まれる前、母犬のお腹の中にいる時から、味覚を感じている可能性が高いと言えます。
妊娠期の母犬が食べた食事は消化吸収された後、羊水の中へと流れ込んでいきます。ですので、その時に何を食べていたかが子犬の嗜好性に影響を及ぼす可能性があるのです。
同様に、授乳期に母犬が食べていた食事は乳汁に含まれていきます。そのため、授乳期に母犬が食べていた食事も重要です。
さらに、生後6ヶ月まで特定の食品しか食べていなかった子は、食べ物に対する嗜好性が固定されることがわかっています。
結局犬の嗜好性は、妊娠期から授乳期にかけての母犬の食生活に多大なる影響を受ける可能性が高く、離乳から生後6ヶ月頃までの食生活が、その後のそれを決定付けると言えそうです。
ヒトの場合も3歳までに味覚が決まると言われていますが、犬の場合はそれよりももっと早く決まってしまいます。
そして結局うちの子が好きなものって?
我々は食事をする時、味覚だけでなく、視覚、嗅覚、聴覚、触覚、すなわち五感の全てでもって楽しむことができます。
一方で、犬は 匂い>食感>味>見た目でごはんを吟味している、と言われています。美味しいかどうか、よりもまずは食べられるかどうか、ということが重要なのです。
冷たいものより温かいものを好む傾向にありますが、それはその方が匂いが立つから、ドライフードよりも半生、またはウェットタイプを好むのはその方が食感が好みだから、といった具合です。
ただ、全ての嗜好性を凌駕するのが、「飼い主の手」です。
犬は飼い主の手から直接与えられたものであれば、何でも美味しく感じることができると言われています。世界で一番信頼している飼い主さんから与えられるもの=安心して食べられるもの、という訳です。飼い主の手からでも食べないものは、本当に嫌いなもの、と言えるでしょう。
秋は様々な果物も豊富に収穫されます。
食後のデザートとしてほんの少し...一緒に秋を感じるのもいいかもしれませんね。
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。