【column】 しっぽの秘密
2023.01.10
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「尻尾」=しりおの音が変化して「しっぽ」という読み方になったと言われているしっぽは、尾椎と言われる小さな骨が数個〜20個程度繋がっており、骨の中に神経と血管が通りその周りを筋肉で覆われています。しっぽはそれらの筋肉が収縮することで動いています。
しっぽには様々な種類があります。
25〜30cm程度の長く真っ直ぐなしっぽはフルテイル、長いしっぽが真ん中あたりから背中に向かってクルンとカールしたタイプのしっぽをエアリアルカールドテイル、しっぽの先端がねじ曲がっているしっぽをキングドテイルといい、日本では昔から尾曲がり猫として可愛がられてきました。6〜7cmの短いしっぽをボブテイル、極端に短いまたは完全にしっぽのない状態の子をランピーマンクスと言います。
ちなみに短いしっぽの猫は日本ではよく見かけますが、短いしっぽを発現する遺伝子は東南アジアが原産といわれており、もともとはアジアの猫特有のしっぽです。
しっぽには幾つか役割がありますが、その一つとして、バランスをとる舵取りの役目、が挙げられます。
走っている時、急旋回する時、落下しそうな時、しっぽが上手に体のバランスをコントロールしています。
私たちの足にしっぽを巻き付けるように通り過ぎることがありますが、これはしっぽの付け根にある臭腺から出る臭いを擦り付けて、「これは私のもの」とマーキングしています。
また寒くなると長いしっぽに顔を埋めて寝ている姿をよく見かけるようになりますが、これは濡れている鼻先から体温を奪われないように、またマフラーのように体温を保時するためにも役立っています。
しっぽから感情を読み取ろう!
犬がしっぽを高く上げて大きくブンブン振っている時は嬉しく興奮している時であることはよく知られていますが、猫はどうなのでしょう?
猫もしっぽをピンと立てている時は、嬉しい時、何か要求がある時、興味深いものがある時、などです。
さらにそのしっぽの先をプルプルと小刻みに震わせている時は、とても嬉しく興奮している時、逆に付け根から左右にゆっくり振っている時はリラックスしている時です。
座った状態でしっぽを上下にパタパタ動かしている時は、興味深いものを目前に何をするか考えている状態、しっぽの先をピクピクさせている時はもっと集中している時です。
寝ている時にしっぽの先だけ小さく振っている時は何かに対して反応している時、大きくパタパタしている時は少しイライラしている時です。夢に反応しているのか、寝ながら耳に入ってくる情報に反応しているのか、聞いてみたいところですね。
一方でしっぽを激しく左右に振っている時は、非常にイライラしてストレスがたまっている時です。
反対にしっぽをダランと下げて動かさないような時は、叱られてしょんぼりしていたり、元気がない時に見られます。 こういう時は他に症状がないかしっかりと観察しましょう。
猫のしっぽはとてもデリケート
ふさふさの長いしっぽを見ると、つい触りたくなります。猫が嫌がらない程度にそっと触るのは大丈夫ですが、気軽な気持ちで引っ張ったりするのは大きな事故や怪我につながります。
猫のしっぽは付け根から先端まで、尾骨神経という神経が通っており、たくさんの種類の筋肉で覆われています。
そのためなめらかな動きが表現できるのですが、尾骨神経は付け根の部分で様々な神経とつながっており、ここが傷つけられると、歩行障害、排尿排便障害、下半身麻痺、といった障害が起こる可能性があります。これを仙尾部外傷、通称「猫踏んじゃった症候群」と言います。
しっぽを踏まれたり、引っ張られたり、戸に挟んでしまったりしたことで発症しますので、普段から十分に気をつける必要があります。
猫のしっぽはとてもおしゃべりです。
今何を伝えたいのか、正しく理解してもっともっと仲良くなりたいですね。
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。