【column】うちの猫、もしかして花粉症?
2023.02.16
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目が痒い、水のようなさらっとした鼻水が止まらない、といった症状が出始め、「あ、今年もやってきたな。」と気付く花粉症の季節。日本人の花粉症有病率は実に40%を超え、また3人に1人がスギ花粉症と言われています。
花粉症というのはご存知の通り、スギやヒノキ、ブタクサなどの花粉に反応して様々な症状を起こすアレルギー性疾患の一つです。では、猫も「花粉症」になる子はいるのでしょうか?
答えは、YES、猫も花粉症になります。
しかも年々その数は増えているように思います。
ヒトの場合の花粉症、というのはくしゃみ、鼻水、目の痒みといった症状が主になりますが、猫の場合そうとは限りません。
近年多くなってきているのは、皮膚の症状です。
強い痒みが過剰なグルーミングを引き起こし、体のあちこちに脱毛斑ができます。脱毛部位は弱い皮膚が露出するので、二次的に常在菌による膿皮症を引き起こし、さらに痒みが増長してしまいます。
またくしゃみ、鼻水、涙の量が増える、目やにが出る、などと言ったヒトの花粉症と似たような症状が出る場合もあります。
ただしこの症状、いわゆる猫風邪とそっくりで、猫風邪との区別が困難です。
「猫風邪」か「花粉症」かを見分ける方法は、「季節性」があるかどうか、です。
それぞれの花粉によって飛来する「時期」があります。その時期に合わせて、上記のような症状が出る場合は「花粉症」、とくに時期に関係なくなんとなく通年いつでも見られる場合は「猫風邪」と判断するといいでしょう。
どんな花粉にアレルギーがあるのか、また他にアレルゲンはないのか、詳しく知りたい場合は「アレルギー検査」を行うことで判明します。
現在アレルギー検査は幾つかの検査会社で行っており、花粉を含めた植物を始め、ハウスダストやダニなどの環境因子を一緒に調べることができます。もちろん食べ物について調べることも可能です。
調べる項目数や検査会社によって、検査費用はまちまちです。10項目程度の検査であれば、10,000円程度で調べられますが、項目が増えると40,000円近くかかる場合もあります。
まずは、かかりつけの病院で検査の詳細と費用を聞いてみて下さい。
花粉症対策ってどんなことをすればいいの?
花粉症を引き起こさないためには、とにかく花粉に暴露されないようにすることが大切です。
窓などから入ってくる花粉はカーテンやブラインドなどにも付着します。特に静電気を起こしやすい冬から春にかけてはより吸着する傾向にあります。水拭きをしたり、掃除機で吸い取ったり、時々は洗濯したりといった対処が必要です。
室内の空気中に浮遊する花粉の除去、という意味では最近は空気清浄機が非常に有用です。
高性能な空気清浄機のエアフィルタはほとんど「HEPAフィルタ」が採用されています。その性能は0.3μmの粒子を99.9%集塵できるものと規定されているので、10〜30μmの花粉は確実に集塵できると考えていいでしょう。
ただし、床に落ちた花粉は空気清浄機では集塵できません。掃除機や水拭きで確実に除去してあげましょう。
洗濯物もこの時期は部屋干しが理想です。空気清浄機の中には除湿や加湿といった機能を持ったものもありますので、そういった機能を上手に使うといいですね。
グルーミングが常の猫たちにとって、花粉が付着した被毛をグルーミングすることはアレルゲンの摂取につながります。定期的なブラッシングや濡れタオルで体を拭いてあげることで花粉を除去しましょう。
それでも症状が強く出てしまう場合は、かかりつけの先生に相談してお薬を処方していただきましょう。
知らず知らず花粉に反応して辛い思いをしている猫ちゃんがいると思います。早く気づいて少しでも楽にしてあげたいですね。
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。