【column】 ワクチンについて改めて考えよう!
2023.03.16
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近年、猫の飼育頭数・多頭飼育が右肩上がりで増えている日本ですが、自宅に迎えてから完全室内飼いを理由にワクチン接種をしていないご家庭もかなりあるかと思います。今回は改めて猫のワクチンについて考えてみましょう!
ワクチンで予防できるのは、猫風邪の原因となるヘルペスウイルス、カリシウイルス、仔猫突然死の原因であるパルボウイルス、猫白血病ウイルス、狂犬病ウイルス、猫エイズウイルスの6種類のウイルス感染症、それとクラミジア(細菌)です。
一般的によく接種されている「混合ワクチン」は、ヘルペス、カリシ、パルボの3種のウイルスで、これがコアワクチンとなります。コアワクチンに分類されている感染症は、致死率・感染率が高い感染症で、地域や生活様式に関わらず、全ての猫が接種すべきワクチンです。日本においてはこれ以外の3種のウイルスをノンコアワクチンに分類しており、必要がある時のみ接種すればいいとされています。
さらに猫のワクチンは、弱毒生ワクチンと不活化ワクチンに分けられます。
生ワクチンは病原性を弱めた弱毒株を生きたまま注射するもの、不活化ワクチンは、組織培養した病原体を精製し、毒性や増殖性を失わせたものをアジュバントと呼ばれる添加物と一緒に注射するものです。
一般的に、生ワクチンの方が免疫が付きやすく、不活化ワクチンの方が免疫が付きにくいと言われていますが、では生ワクチンを接種すればいいか、というと一概にそうとも言い切れません。
例えば免疫力が落ちている仔猫に生ワクチンを注射すると、病原性は弱いはずのウイルスが急に増殖して、その感染症を発症させてしまうことがあります。そのため状況をしっかりと見極めて、適したワクチンを適した時期に接種する必要があります。
では、どのようなスケジュールでワクチン接種を行えばいいのでしょう?
仔猫は生後数週間、母猫由来の抗体に守られていますが、どれだけ初乳が飲めたかによってその抗体の量はかなり左右されます。
そのため、1回目のワクチン接種は生後4~6週で打つことが推奨されています。その後16週まで3~4週間毎に接種を行い、26週(生後半年)で再度接種を行えば、その後は3年に1度の接種で十分となりますが、それまでの間に5~6回の接種が必要になります。
ワクチンの重要性は知っていても、皆様の中には度重なるワクチン接種に抵抗のある方もいらっしゃると思います。
そんな時は、コアワクチンである、ヘルペス、カリシ、パルボの3種類のウイルスに対する体の中の抗体がどの程度上がっているのかを検査してみるといいでしょう。
抗体価検査を行うことで、それぞれのウイルスに対する抗体をどの程度持っているかがわかり、結果次第ではワクチン接種を先送りすることができます。
最近では検査料もワクチン接種料と同じくらいの価格でできるようになりましたので、一度かかりつけの先生に相談してみてください。
完全室内飼いでもワクチン接種が必要なワケ
コアワクチンに分類されているヘルペスウイルスとカリシウイルスは、くしゃみや鼻水、流涙、結膜炎などいわゆる猫風邪と言われる症状を引き起こします。
カリシウイルスはその一部の猫が、ヘルペスウイルスはほぼ全頭が、一度感染すると一生ウイルスキャリアとなります。ですので、もともとそういう症状があり、これらのウイルスの関与が疑われるのであれば、ワクチンを定期的に接種することで再発を防ぐことができます。
外に出さないから大丈夫、なのではなく、潜在的に持っているウイルスを回帰発症させないために、定期的なワクチン接種を考えてあげてください。
ワクチンは感染症から身を守るために絶対に必要な大切な手段です。
万が一の事があっては後悔してもしきれません。その子に合ったワクチンを適切な時期に接種してあげましょう!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。