【column】 猫はヒトの言葉を理解している?
2023.04.10
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横でのんびり寝ていた猫が突然ハッと顔を上げて、耳をパタパタ。私たちには何も聞こえないのに、何かの音や気配を探している光景をよく見かけます。
ヒトは20Hz(ヘルツ)程度の低い音を聞き取ることができますが、猫はその程度の周波数はもちろん、より周波数の高い音も聞くことができます。ヒトの耳で聞こえるのは最大でも2万Hzほどですが、猫は6.5万Hz程度の高音を聞き分けることができます。
これは野生のネズミなど猫の餌となる小動物が発する声を聞き取るために発達したと言われています。
逆に猫は低く大きい音が苦手です。
自然界において体が大きく骨が太い動物、つまり猫にとって天敵となるような動物はより低く大きな声を出します。そのためそういった声や音には本能的に警戒してしまうのです。女性より男性を苦手とする子が多いのはそういう理由です。
猫の耳は立ち耳や垂れ耳、カールした耳などの形が見られますが、耳の形によって聴力にさほど差はないと考えられています。
猫の耳は180度、どの方向にも自在に動かすことができます。じっとして耳をピクピク動かしている時は、どこから音がしているのか、その方向を確かめつつ集音し、その音が何を示しているのかを考えている時です。
また、猫の耳は感情を表す器官でもあります。 例えば耳を横から後方に向けてぺたんと寝かせている時は警戒している時、耳を後ろへ反り返らせている時は怒っている時です。
そのような様子を見せている時は、そっとしておいてあげましょう。触らぬ神になんとやら、です。
猫はヒトの言葉を理解しているのか?
犬と違い、猫がヒトの言葉を理解できるのかについて示した研究はほとんどありません。
猫は社会的でなく、また研究するために「頑張らせる」ことが難しいからです。
そんな中、パリ第10大学の動物行動学者であるシャーロット・デ・ムーゾン氏が、様々な猫種の猫が飼い主と見知らぬ人の録音された声にどのような反応をするか、という研究を昨年10月「Animal Cognition」に発表しました。
その結果、猫たちは飼い主の声を聞くと、しっぽを振ったり、耳を向けたり、毛繕いなどの行動を一時中断する、といった反応を見せるものの、見知らぬ人の声にはそのような反応を示しませんでした。
また、飼い主が他の人に話しかけている声に関しても、反応を示さなかったと言います。つまり、「飼い主」が「自分に対して」話しかけている、ということを正確に理解できていることを表しています。
また2022年4月「Scientific Reports」に発表された京都大学の研究結果が注目を浴びています。
多頭飼いの家庭の猫をモニターの前に座らせ、同居猫の名前(ネコA)を流し、モニターにその猫(ネコA)を、その後全く関係ない猫(ネコB)の写真を写し、その猫がモニターを見ている時間を計測。 ネコAの名前が呼ばれた時、モニター上にはネコAの写真が出るはずなのに、ネコBの写真が映し出されたら、モニターを見つめる時間が長くなるかどうかを調査したのです。
その結果、「聞いた名前と違うネコのモニター写真を長く見る」という結果が見られました。つまり、「名前を呼ばれた猫の名前と顔を認識している」ということになります。
ちなみに、うちの4匹の猫たちは自分たちの名前を完璧に理解していますし、「ごはん」の「ご」を発しただけで、大歓声をあげて大急ぎで走り寄ってきます。これは朝だろうと夜だろうと、シチュエーションが違っても全く同じ反応です。彼らが世界一好きな言葉です。
皆様の猫たちにも、きっとそういった「特別な言葉」があることと思います。 そういった言葉を通じて、より一層深い絆を築いていけるといいですね。
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。