【column】 犬の知能はどのくらい?
2023.08.09
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1300g〜1400gあるヒトの脳に比べ犬の脳はおよそ60g〜70g程度(体の大きさによって異なります)で、全体重のうち脳の重さが占める割合は、ヒトは0.89であるのに対し、犬は0.14しかありません。
が、実は基本的な脳の構造はとてもよく似ています。
脳の一番表面部分を覆う大脳新皮質は、判断や思考といった「理性」に関する部分を司り、その内側に広がる大脳辺縁系は情動や意欲といった「感情」に関する部分を司っています。その更に内側、脳と脊髄を結ぶ脳幹は「生命維持」に関することを司ります。
ヒトの脳は、理性を司る大脳新皮質が多くを占めていますが、犬はこの大脳新皮質があまり発達しておらず、小さくうっすらとしかありません。逆に犬は匂いに反応する嗅球が非常に発達している一方、ヒトの嗅球は進化と共に退化、縮小しました。
感情を司る大脳辺縁系は発達しているため、本能や「喜怒哀楽」にまつわる知能、行動に関してはとても優れていると言われています。
2019年に発表された論文によると、犬種によって脳の構造は大きく変わり、大きさだけではなく、形状にも違いがあり、それによって行動特性が変化することがわかっています。 どういう特性を求められて開発改良されてきた犬種なのか、それによって発達する脳の領域も変わってきているのは当然といえば当然なのかもしれません。
犬の記憶力ってどのくらい?
電話番号などを瞬時に覚える記憶を短期記憶と言いますが、ヒトの場合数秒〜数十秒しかもちません。 犬はさらに短く、数秒程度しか覚えていないことがわかっています。
記憶を司っているのは海馬と言われる部分ですが、海馬は容量が小さいため瞬間的な記憶しかできません。長期記憶として保存されるのは大脳皮質。海馬は記憶を振り分けて、長期で記憶すべきものを大脳皮質へと転送します。
この海馬が小さい犬は短期記憶が苦手ですが、では長期に渡って記憶するのはもっと苦手かというとそうとも限りません。 長期記憶となるものは何度も繰り返される場合や、強い感情を伴った場合、とされています。
「嬉しい」「楽しい」という感情とともに記憶された顔や声、匂いや場所などはポジティブなものとして、「怖い」「悲しい」といった感情とともに残った記憶はネガティブなものとして記憶されます。そして、その感情が大きければ大きいほど長期にわたって記憶されることもわかっています。
長期記憶が実際にどのくらいの長さまで覚えていられるのかはまだ検証中ですが、10年経っても忘れない記憶がある事例は数多く報告されています。
犬の知能は人の何歳くらい?
犬の知能は2〜3歳の子供と同じくらいと言われています。
言葉を覚えたり、人の仕草や表情を読み取り理解することができ、コマンドに従うことができる、といった点でそのくらいの年齢と同じ程度と考えられています。
犬のIQを研究しているカナダの心理学者スタンレー・コリー博士は、犬が自分で考え解決しようとする能力、本能や直感、人間の指示に服従した行動を取る能力、からIQを測定しています。
人と関わり合う作業を行う犬は点数が高く、人の指示ではなく自ら獲物を追う本能が強い犬や独立心が強い犬は点数が低い傾向があります。ですが、IQの低い犬=頭の悪い犬、ということではなく、人間のパートナーとしてコミュニケーション能力が高い犬がIQが高い、と評価されています。
犬と暮らしていると、こんなことも理解しているのか、と驚くことがあります。あなたの隣にいる犬も、実はまだまだ隠された能力があるかもしれません。
毎日の生活の中で様々なコマンドを駆使しながら、より円滑で楽しいコミュニケーションをとることができるようになるといいですね!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。