【column】上手にお留守番できるかな?
2025.05.14
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猫は基本的に単独行動で縄張りの中、狩りに備えて1日の大半を寝て過ごす動物です。そういう意味では留守番も苦にならないと考えられています。実際留守番カメラなどで留守番中の猫の様子を見ていても、普段と変わらないという場合がほとんどです。しかし、飼い主が帰宅すると足元に擦り寄ってきたり、にゃおんと鳴き声をあげて甘えてきたり、寂しかったと訴える子は多く見られます。
完全室内飼いの猫たちにとって、自分の縄張り内で一緒に暮らす家族に対して多少の依存や甘えが出てくるのは自然なことです。留守番自体はさほど苦にならなくても、家族の不在は不安やストレスを感じさせる要因になります。
猫に留守番をさせる時は、普段通り快適に過ごせるように、ご飯は多めにそして新鮮な水を用意し、出かける前に必ずトイレをきれいにし、室内の温度管理を徹底させ、部屋の中を自由に動けるようにしておく、などの配慮をしましょう。
ただ仔猫、シニア猫、急変する可能性のある持病のある猫の場合、極力留守番は避けた方がいいでしょう。どうしても留守番させる必要がある時は最低限の時間で戻ってくるようにしましょう。
留守中に起こりがちなトラブル
留守中に起こる事故で多いのは盗食や誤食です。猫は常に飼い主の行動を非常によく観察しています。普段は全く気にする素振りは見せないのですが、例えば自分の大好きなおやつや好物がどこに入っているか知っていて、完全に飼い主がいなくなったのを確認すると、そのおやつをこっそり盗みに行ったりします。ゴミ箱なども漁りますので、生ごみは蓋つきのゴミ箱にきちんとしまっておきましょう。
また普段は入っちゃダメ!登っちゃダメ!と言われているエリアにも喜び勇んで忍びこんでいきます。本当に入られて困るところは、猫たちが絶対に入れないようにしておかなくてはなりません。
また食べてはいけない食べ物や植物、紐付き、獣毛のおもちゃ、ヘアゴムやスズランテープなど誤食の危険性はあるものは、猫が開けられない場所にきちんとしまいましょう。
テレビのコードなど家電のコードを齧る可能性のある猫の場合、コードを隠すのが一番ですが、コードのない部屋で留守番してもらうなどの対策をする必要があります。またエアコンのリモコンをテーブルの上に置いておいたため、猫がうっかりリモコンのスイッチを押してしまい、エアコンが止まっていた、というケースも見られます。万が一停電が起こった時にどうするか、そういったことも考えておく必要がありますね。
さらに部屋の色々な場所、飼い主の持ち物や寝具などに不適切排尿をするケースもよく見られます。こればかりは予防することがなかなか難しいですが、トイレの数を増やす、排尿されては困る場所は防水シーツでカバーする、かばんなどの持ち物は猫の入れない部屋にしまっておく、といった対策をお勧めしています。
帰宅したらしてほしいこと
帰宅したら、留守番を頑張ってくれた猫に感謝しましょう。我が家の猫たちは玄関の扉の前まで走ってきて待っていますので、順番に抱っこして「ただいま」の挨拶をします。こういったスキンシップは猫たちに安心感を与えます。
そして部屋の中に何か異常がないか隅々までしっかり見回ります。排尿排便はしているか、ご飯は食べているか、お水は飲めているか、嘔吐はしていないか、不適切排尿はないかなどの確認をしましょう。
猫の様子もしっかり観察しましょう。特に多頭飼いの場合、下痢や嘔吐、血尿などを見つけた時に誰にそういった症状があるのか、きちんと突き止める必要があります。また一度不適切排尿の癖がついてしまうと、それを矯正するのは時間がかかるケースがほとんどです。もし不適切排尿が続くようなら、かかりつけの先生、場合によっては行動学の先生に相談しましょう。
猫に留守番の時間ができてしまうのは仕方のないことです。ただ、その時間を快適に過ごせるよう環境を整えてあげなくてはいけません。
「行ってきます!」「しょうがないなぁ。わかった!早く帰ってきてね。」そんな風に留守番をお願いできるよう、頑張らなくてはいけませんね!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。