【column】 しっぽのひみつ
2023.01.10
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「尻尾」=しりおの音が変化して「しっぽ」という読み方になったと言われているしっぽは、尾椎と言われる小さな骨が数個〜23個繋がっており、骨の中に神経と血管が通りその周りを筋肉で覆われています。しっぽはそれらの筋肉が収縮することで動いています。
しっぽ、と言っても様々な形があります。
根元がしっかりしていて先がシュッとしている長めのしっぽはオッターテール、秋田犬やパグなどに見られる背中の上でくるんと巻いたしっぽはカールドテール、ビーグルなどに見られるサーベル(剣)のような形で上もしくは下にカーブしたしっぽをセイバーテールと呼びます。またウェルシュ・コーギーのように断尾で短くなった、もしくは先天的にしっぽがないしっぽのことはボブテールと言われています。
しっぽには幾つか役割がありますが、その一つとして、バランスをとる舵取りの役目、が挙げられます。走っている時、急旋回する時、泳ぐ時、しっぽが上手に体のバランスをコントロールしています。
また寒くなると長いしっぽに顔を埋めて寝ている姿をよく見かけるようになりますが、これは濡れている鼻先から体温を奪われるのを防いでいるのです。
しっぽから感情を読み取ろう!
しっぽはその「高さ」と「振り方」によって、どういう気持ちなのか読み取ることができます。
しっぽを高くあげている時は、興奮、自信の誇示、遊びへの誘い、集中といったいい意味がある反面、警戒や威嚇、攻撃性、といった意味合いもあります。
体と水平に伸ばしている時は、好奇心や興味がある一方でやや緊張している状態です。
だらんと下げている時は、不安やストレス、恐怖を感じています。
完全に体の内側に丸めてしまっている時は、極度の恐怖を感じていたり、体に痛みがあったり調子が悪い時などです。また犬同士のやりとりの中でこのような状態になる時は、降参、を意味します。
そしてしっぽを大きく振っている時は、感情が昂ぶって興奮している時、小刻みに振っている時は、若干興奮はしているものの相手に対して多少警戒している時です。
しっぽをゆっくり振っている時は、少し警戒心を持ちながら考察しています。
しっぽを振らずに高く上げている時は、自分が優位であることを誇示しており、水平に保っている時は、緊張感をもって相手を観察しています。
しっぽを下げて振らない時は、不安を抱えている時です。
どの高さでどんなスピードで振っているかによって感じている感情は異なりますが、基本的に高い位置で振っている時は自信や好意を、低い位置で振る場合は緊張や恐怖を感じていることが多いでしょう。
しっぽから病気がわかる?
いつもしっぽを高く上げてブンブン嬉しそうに左右に振っているのに、いつもより下がっている、あげることができない、振り方に力がない、しっぽを上手に使えずにフラフラしている、などいつもと違う様子があるようでしたら、しっぽのみならず体に異変が起こっている可能性があります。
脊椎の中を通る神経の束が腰の終わりの部分で枝分かれするその様子が馬のしっぽのように見えることから馬尾神経と呼ばれる神経があります。
ここが腫瘍や椎間板疾患などで圧迫されるとしっぽの根元に痛みが出たり、麻痺して動かなくなるといった症状が見られ、これらを総じて馬尾症候群と言いますが、原因を追求するためにCTなどの検査が必要になることもあります。
また、ラットテールと言われるしっぽの先から徐々に根元に向かっての脱毛が見られたら、甲状腺機能低下症などの病気が隠れている可能性があります。そのような症状が見られる場合は、一度詳しく検査をしてみるといいでしょう。
犬のしっぽはとてもおしゃべりです。
何を伝えたいのか正しく理解して、いつもしっぽを高く上げてブンブン振って喜んでくれるようにしてあげたいですね。
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。