【column】 犬はヒトの言葉を聞き取れる?
2023.04.10
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犬がヒトよりも聴覚が優れていることはみなさんご存知だと思いますが、どんな音がどの程度聞こえているのでしょう?
ヒトは20Hz(ヘルツ)程度の低い音をきくことができますが、犬は周波数のより高い音を聞くことができます。ヒトの耳で聞こえるのは最大でも2万Hzほどですが、犬は5万Hz程度の高音を聞き分けることができます。これは野生のネズミが発する声を聞き取るために発達したと言われています。
またヒトは0dB(デシベル)程度の小さな音をかすかに聞くことができますが、犬はさらに−5dBほどの小さな音も聞こえるようです。500〜8000Hzくらいの聴きやすい周波数の音であれば、さらにヒトより13〜20デシベル低い静かな音も聞くことができます。
しかし、聴覚に関して全てにおいて犬の方がヒトより優れているかというと、そうでもありません。
同じ周波数で2つの音を同時に聞き分ける能力や、持続時間の非常に短い音を識別する能力はヒトの方が優れています。 ヒトの方がこれらの能力に長けているのは、「言語」を聞き分けるために発達したから、と考えられています。
犬種や耳の形で聴覚に違いは出るの?
犬種によって、立ち耳だったり垂れ耳だったり、耳の大きさにも違いがありますが、結論として聴力自体にさほど差はない、と言われています。
ただ、ドーベルマンやピンシャーなど立ち耳でしかも耳介が大きい犬種は集音能力に長けており、他の犬種よりも聴覚が優れている可能性があります。
またヒトの耳は様々な方角からの音を、広く拾うことができる形状になっていますが、犬の耳は音がどこから発生しているかを探るには耳を動かす必要があります。犬の耳介は18もの筋肉で支えられているため、自由自在に耳を動かすことができます。
音の伝わり方はヒトと同じです。外耳→中耳→内耳を通して伝わってきた振動が、蝸牛神経に伝わり、延髄→視床→大脳皮質の聴覚野に送られてはじめて「音」として認識されます。
犬はヒトの言葉を聞き取ることができるの?
「うちの子は言葉を理解している!」と感じている方が大半だと思います。
犬がヒトの言葉を理解できているかどうか、については様々な研究がなされています。 2016年、ハンガリーのエトベシュ・ロラーンド大学のアッティラ・アンディクス氏は、犬の脳がどのように言語を処理しているのかを解明するための研究を行いました。
その結果、犬は言葉そのものに左半球で反応し、言葉のイントネーションに右半球で反応することがわかったのです。
中でも「飼い主」さんが「褒め言葉」を「賞賛の口調で」伝える時が右半球の反応が一番活発になることが分かりました。
つまり「褒められている」ということを「言葉」と「感情」で正確に理解することができるということなのです。
褒め言葉を聞いた犬の脳は、まず原始的な部位である皮質下で感情面に働きかける力であるイントネーションに反応し、その後、大脳皮質の聴覚野が反応し、言葉の意味を分析します。これは驚くべきことに、ヒトが「言葉とそこに込められた感情」を理解するのと同じメカニズムなのです。
では、「単語」としてどの程度の言葉を理解できているのでしょうか?
これに関しては15程度の言葉しか理解していない子もいれば200を超える言語を理解する子もいる、と言われており、かなり個体差があるようです。
ただ、語感が似ている言葉に関しては、区別ができないことが分かっています。 犬は我々の感情を正確に読み取り、その上である程度の「言葉」を理解することができます。
ですから、褒める時は全力で、大げさなくらい精一杯褒めてあげましょう! コミュニケーションツールの一つとして「言葉」を用いて、より絆を深めていけるといいですね。
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。