【column】 犬の見ている世界を知ろう
2023.10.27
|
こちらをじっと見つめられると、思わず何でも頷いてしまいそうな、クリっと大きい魅力的な瞳を持っている犬たちですが、目にはどんな秘密があるのでしょうか?
犬の目の構造は人の目とよく似ています。
強膜、脈絡膜、網膜という3つの膜が大きな眼球を支えており、目から入った情報は、角膜→水晶体→硝子体→網膜→視神系→脳の順番で伝達されます。ここまでは人と全く同じです。
人と異なる部分は①瞬膜(第三眼瞼)があること②輝板(タペタム)があること③水晶体の厚みが人の倍あることです。
タペタムと言われる輝板は網膜の下に存在し、いわゆる反射板の役割を果たしています。これがあることで、人が必要とする光量のおよそ1/4程度でも対象物の輪郭をしっかり捉えることができると言われています。またこれが存在することで、犬の目が光って見えるのです。
逆にカメラのフラッシュライトのような瞬間的に強い光を受けてしまうと、瞳孔を急に調整することができず、網膜に炎症を起こしたり場合によっては剥離を引き起こす場合がありますので、フラッシュを使った撮影はNGです。
よく犬の視力はどのくらい?という質問を受けます。
実は視力としては0.1〜0.3程度と言われていますので、世の中のものはぼんやりと見える程度です。しかも近ければ近いほど良く見えるわけでもなく、70cm程度の距離、また5m程度離れたところでピントが合うと言われています。
ただし動体視力が優れているため、動いているものに対してはもっと遠いものも見ることが可能だと言われています。
人よりも水晶体が厚いことで光を取り込みやすく夜目が利くようになっている一方、水晶体を動かす毛様体の機能が発達していないため、対象物のピントを合わせることが苦手で視力としてはその程度しかないのです。
犬の見ている世界はどんな色?
色を認識するために必要な「錐状体」と言われる細胞が網膜上に存在し、人には赤、緑、青の3種類が、犬は青と緑(というよりほぼ黄色)の2種類のみが存在しています。 しかもその数はおよそ1/6程度と言われています。
そのため、犬は基本的に青と黄色のほぼ2色とその中間色のみ識別できると考えられています。
カリフォルニア大学が行った犬の色覚に関する実験によると、犬は 緑・黄色・オレンジを「黄色っぽい色」、紫・青を「青っぽい色」、赤に関しては「非常に暗いグレー」に見えている、という結果になりました。
つまり、盲導犬たちは信号を見分ける時、赤と青(緑)を見分けているのではなく、グレーと青(緑)を見分けていることになります。
また犬は紫外線が見えることがわかっていますが、どのように見えているのかはまだ解明されていません。視力や色だけではなく、紫外線で物の識別ができるとも言われており、どんな世界に見えているのか、ますます興味がありますね。
犬の目の病気にはどんなものがある?
一緒にお散歩に出かけた時に、あれ?目が白い?と気付くことがあるかもしれません。
太陽光の元で眼球を覗いた時に、青っぽく濁っているようであれば「核硬化症」、白っぽく見えるようなら「白内障」の可能性があります。
核硬化症の場合は視力に問題はありませんが、白内障の場合、視力は失われていきます。白内障の進行を緩やかにするための点眼薬はありますが、既に肉眼的に白く見える場合はそれを使ってもあまり意味はありません。治療は外科手術のみ、となります。
また目をショボショボしていて開けるのが辛そう、という場合、角膜に傷ができているかもしれません。犬たちの目は前方に飛び出しているので、実はとても傷がつきやすいのです。強い風が吹く日のお散歩中に、飛んできた砂や埃で角膜を傷つけることもあります。
傷がついたらできるだけ早く、角膜を保護し修復させるための点眼が必要になります。しばらくの間は3〜4時間毎の点眼が必要で大変ですが、マメな点眼が治癒するかどうかにかかってきます。
その他にも緑内障、ぶどう膜炎、網膜剥離などなど我々と同じように目の病気はたくさんあります。
目をこすったり、ショボショボしたり、眼球に変化が見られたりしたら、なるべく早く病院で診てもらうようにしましょう!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。