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【column】 暑い夏を快適に過ごすために

2024.07.06

犬猫通信 for DOG

夏バテ知らずのカラダを手に入れよう!

今年の夏も昨年同様猛暑が予想されています。ヒトも犬も夏バテしないようしっかり対策しなければなりません。

みなさまご存知かと思いますが、犬たちは体表面から発汗することはできません。つまり汗をかくことで体温を下げることはできないのです。ただ皮膚血管の拡張を促し、体表面から気化熱で多少の放熱をすることは可能です。循環血液量が増加することも体温を低下させる一助となります。

また、「ハアハア」と口呼吸することで、体内の熱を吐きだし、さらに舌や口の中の水分が蒸発するときに起こる気化熱を利用し、口腔内の熱を放出することで体温を逃すことができます。

暑さに強いカラダをつくる上でもう一つ重要なポイントは筋肉量を増やす、そしてしっかり維持する、ことです。
筋肉の水分保持量は非常に多いので、筋肉量が増えると体内で貯蔵できる水分量が増えることになります。

筋肉量を増やすためには、良質なタンパク質を摂ること、そしてある程度の運動が必要です。お散歩は早朝または20時以降、アスファルトがそこまで暑くなっていない時間に行きましょう。ただし決して無理はさせないようにして下さい。

暑さのせいでいつもより食欲が落ちる子もいるかもしれません。その場合は、効率よくカロリーや栄養を摂取できるような、嗜好性の高いトッピングを考えてあげましょう。 食材としては豚肉やうなぎ(ビタミンB1)、牛肉の赤身(リジン)、魚の血合い部分(タウリン)などがいいでしょう。水分補給を目的として、きゅうりやレタス、スイカなどをあげてもいいですね。



熱中症って本当にコワイもの?



熱中症は「高温多湿」の環境下において、高体温及び脱水によって起こる全身疾患のことをいいます。体温が上がることで細胞を構成するたんぱく質が変性し、細胞そのものがダメージを受けます。それに伴い全ての臓器の機能が著しく低下し、深刻な状態に陥ります。

具体的には、開口呼吸、頻脈、粘膜の充血やうっ血、がまず見られます。さらに症状が進むと、流涎、運動失調、嘔吐・下痢・下血などの消化器症状、乏尿、無尿などが見られ、痙攣発作、虚脱、意識消失から昏睡状態に陥り、最終的に心肺停止することになります。

重度の脱水などから急性腎不全が起こりやすく(乏尿や無尿)、低血糖もよく見られます。 また消化管粘膜の細胞がダメージを受けると、腸内細菌が腸粘膜から侵入し、他の臓器へと移動します。その結果、敗血症や、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全を起こすきっかけとなってしまいます。

こういった変化は体温が正常に戻った後にも進行する可能性があります。体温が下がったから大丈夫、と安心することができないところが、熱中症の怖いところなのです。



熱中症になってしまったら!




熱中症の治療で大切なのはとにかく一刻も早く「体温を下げる」ことです。ただし急激に下げると内臓により強いダメージを与える可能性があるので、ゆっくりと下げていく必要があります。

まず、常温の水を体中に霧吹きでスプレーします。もし、霧吹きなどがなければ、水で濡らしたタオルを体中にかけてあげましょう。 その上で、扇風機やうちわなどで風を送り、気化熱を利用して体温を徐々に下げていきます。 風を当てていると段々水分が蒸発するので、定期的に霧吹きで水を噴霧し、タオルも乾いてきたら再度しっかり濡らしてかけ直して下さい。

水を飲ませることも忘れてはいけません。ただし、意識がない時は誤嚥の危険性がありますので、飲ませるのはやめましょう。

そして一刻も早く動物病院を受診することです。一見何もなさそうでも、体の中で何が起こっているかわからないのが、熱中症の怖いところです。必ず受診し、検査をしてもらいましょう。 熱中症が原因で動物病院を緊急受診する子の死亡率は実に50%にものぼります。特に症状が出始めてから90分以上経過していると死亡率はさらに高くなります。

何れにしても、一刻も早い冷却処置が予後を左右します。落ち着いて行動しましょう!
とはいえまずは熱中症にかからないよう注意することが何より大切です。

 

Written by
監修医 小林 充子 先生


麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。
 
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