【column】 関節、骨の病気って どんなもの?
2024.09.05
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猫は非常に体が柔らかく柔軟性の高い動物です。しなやかな体躯で三次元の世界を自由自在に動き回り、関節や骨の疾患とは無縁のように見えますが、実はこの生活スタイルそのものが関節に負担をかけている可能性があるのです。
まず種特異的な疾患として有名なのは、スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成症です。
骨や関節の軟骨部分が本来の形に成熟せず、四肢の先端部が変形して膨れ上がり骨瘤(骨のこぶ)が形成され、また尻尾も短いまま成長が止まり同じく骨瘤が認められます。 その結果、足先や尻尾が滑らかに動かせず、また動かすと慢性的な痛みを感じることとなります。
これはこの種類に特徴的な「耳折れ」の遺伝子と関連するとされており、耳折れの個体では重症度は異なるものの必ず発症します。耳折れは優性遺伝で、耳折れ同士の交配によって生まれた個体はこの疾患が非常に重症化することが知られており、現在はその組み合わせの交配は避けられています。
アビシニアンやデボンレックスなどでよく見られるのは、膝蓋骨内方脱臼です。
膝蓋骨は「お皿」と言われる膝にある小さな骨で、これが正常に動くことで膝をスムーズに伸縮させることができます。 この骨は通常溝にはまっているのですが、その溝が生まれつき浅いと、膝蓋骨がその溝を飛び出しやすく(脱臼)しやすくなります。後ろ足びっこを引く、高いところに飛び上がることができない、など1歳未満で発症するケースが比較的多く見られます。
猫種に関係なく非常に多くの猫に見られる疾患が、変形性関節症です。
5〜10歳でおよそ50%、10歳〜12歳で60%、12歳になると実に80%以上の猫が罹患していることが明らかになっています。関節の軟骨部分に代謝異常が発生し軟骨が変性、破壊され、関節の骨同士が接するようになり、関節を動かすたびに痛みが出てくる疾患です。
関節炎ってどうやって見分ければいい?
今までは難なく飛び乗っていた高さに飛び乗ったり飛び降りたりする時に、その行動をする前に少し躊躇するようになります。飛ぼうかな、どうしようかな、と躊躇っている時はいずれかのタイミングで痛みが出ている可能性があります。
またほぼ1日中寝ていてほとんど走ることがなくなったり、また走ったとしても今までに比べ明らかにスピードや時間が短くなったりしている場合も要注意です。
以前に比べて怒りっぽくなっていたとしたら、それは痛みがあるサインかもしれません。食欲が落ちたり元気がなくなったりする時も、その可能性があります。
歩き方や跳び方の変化だけでなく、痛みを感じているかどうかを観察することが大切です。
どういう環境に整えてあげればいいのかな?
関節・骨の疾患で1番症状を悪化させる恐れがあるのは、肥満です。
体重が重いと関節にかかる負担が大きくなりますので、適正な体重を維持することは非常に大切です。運動をさせることで痩せさせるのは難しいので、食事でコントロールするようにしましょう。
環境の整備も大切です。棚の上などには上がりにくくなるので、段差が低く、滑りにくい素材のキャットタワーを設置したり、ソファやベッドサイドに階段状の足場を作ってあげたりするといいでしょう。
トイレも形状に配慮する必要があります。上から入るボックス型のものは出入りが億劫になったり、またその狭さに抵抗を感じるようになる可能性がありますので、なるべく高さのない広々とした大きいトイレに替えてあげるとトイレの失敗が少なくなります。
また様々なサプリメントが出ていますが、飲ませるのに苦労しないものがあれば使ってみるといいでしょう。できるだけ現状を維持していくという意味ではサプリメントは有効です。
ただ痛みの強い時にはかかりつけの先生に相談して、痛み止めを飲ませてあげましょう。痛みは大きなストレスとなり、他の疾患の原因となったり、食欲や元気の低下に繋がることがあります。
ほとんどの子が罹ると言っても過言ではない変形性関節症。体重管理や環境整備など、普段から気を付けていることで進行を遅らせることできます。日々の観察、ですね!!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。