【column】猫にとっていい香りってどんな香り?
2024.10.21
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小さくて可愛い猫の鼻はいつもうっすら濡れていますよね。
これは匂い分子を吸着するため鼻の表面にたくさんある細かい溝に分泌液や水分が充満していて、ツヤツヤして見えるのです。
猫もヒトも鼻の中に嗅上皮と言われる粘膜を持っています。
この粘膜を構成している細胞が嗅細胞です。ヒトの嗅上皮の面積は3〜7㎠で1円玉〜10円玉程度の大きさで、嗅細胞の数はおよそ500万個程ですが、猫の嗅上皮は20㎠程度で、500円玉1枚分程、含まれる嗅細胞の数はおよそ2000万個と言われており、犬には及ばないもののヒトよりは優れています。
猫は、飼い主さんの匂い、魚や肉などタンパク質の匂い、フェロモンを含んだ匂い、マタタビなどの匂いを好みます。
タバコやアルコールは元々好まれる香りではないのですが、飼い主さんからいつも香るものであれば、「飼い主さんの匂い」と認識するようになります。
ですが危険なものですので摂取させてはいけません。
また猫にとって危険な匂いはたくさんあります。特にアロマオイルは全般的にNGです。
アロマオイルはその名の通り脂溶性で、ヒトや犬はそれを吸収した後、肝臓でグルクロン抱合という方法で脂溶性から水溶性に変換して体外へ排出することができます。
しかし猫はこのグルクロン酸抱合という代謝システムがそもそも存在しないため、脂溶性のアロマオイルは一度吸収すると体外へ排出しづらいのです。
特にティーツリーには要注意です。
猫にとって嗅覚は、視覚や聴覚とは異なり、大脳辺縁系にダイレクトに情報が伝わる感覚です。
つまり「これは何であるか」を考えてから「好きか嫌いか」判断する視覚や聴覚と異なり、嗅いだ瞬間に「好き」「嫌い」「知ってる」「知らない」などの感情や記憶が出てくる、と言われています。
そういう意味で嗅覚というのは独特で、とても興味深い感覚ですね。
フレーメン反応ってなんだろう?
何かの匂いを嗅いだ時に口を半開きにし、目を細めてトロンとした顔をするのを見たことはありませんか?
これはフレーメン反応と言われるもので、主にフェロモンを嗅ぎ分ける時に起こる反応です。
猫は鼻腔と上顎の間、口蓋の奥にヤコブソン器官、鋤鼻器官(じょびきかん)という器官を持っており、ここでフェロモンを感知し受け取ったフェロモンに込められているメッセージを反芻して嗅覚細胞へと運んでいます。
ヒトの汗にもフェロモンが含まれています。
特に足裏から出る汗は1日でコップ一杯分ほどの汗が出ると言われており、その中にはタンパク質や皮脂などが含まれており匂いを発しやすく、それらを吸い込んだ靴下にはとりわけよく反応します。
靴下の匂いを嗅いでフレーメン反応をしているのは、「臭い」のではなくそこに含まれている「フェロモン」に反応しているので、安心して下さい!
うちの子から変な匂いがする?そんな時はどうすればいいのかな?
猫はその習性から自分から匂いがすることを非常に嫌う傾向があります。
毎日丹念にグルーミングするのもその一端で、何か匂いがすると一生懸命それを取り去ろうとします。
そんな猫から変な匂いがしたり、異常に臭い場合は注意が必要です。
全身からも臭うものの特に口の中や涎が臭い場合は、口の中を確認してみましょう。
歯周病や口内炎、歯根吸収症候群など、口の中にトラブルがある可能性があります。
口周りを触るだけで嫌がる場合は必ず口の中に何か問題がありますので、こういった場合は必ずかかりつけの先生に相談しましょう。
グルーミングの回数が減っていることで臭いがする場合は、口が痛い、関節が痛い、全身が怠いなど様々な原因が考えられます。
またシニアの猫は変形性関節炎の影響でグルーミングの頻度が極端に減る傾向があります。
年齢に応じてその原因も変わってきますので、そういう場合もかかりつけの先生に相談して下さい。
日々色々なところをよく観察していることで、病気を未然に防いだり悪化する前に治療することができることがたくさんあります。
猫に顔を埋めて匂いを嗅ぐ時も、いつもと違う匂いがしないか気を付けながら嗅ぐといいですね!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。