【column】 関節、骨の病気って どんなもの?
2024.09.05
|
お散歩で横を歩いているうちの子を見ると、あれ?なんか足の向きがおかしい?とか、あれ?うちの子O脚じゃない?とか、うまく言えないけど歩き方がおかしい?とか、何か違和感を感じることはありませんか?
関節や骨の疾患は、主に成長期と老年期に現れます。先天的に奇形などの異常があった場合、そのまま放っておくと進行してしまう疾患がありますので、特に成長期に関節や骨に異常がないかきちんと把握することが大切です。
その代表的な疾患が膝蓋骨脱臼、通称パテラです。
膝蓋骨は「お皿」と言われる膝にある小さな骨で、何本かの強靭な靭帯で上下に吊られた状態になっており、これが正常に動くことで膝をスムーズに伸縮させることができます。
この骨は通常溝にはまっているのですが、その溝が生まれつき浅いと、膝蓋骨がその溝を飛び出しやすく=脱臼しやすくなります。 お散歩中に急に足を挙げて三本足でスキップするように歩き始めたら、まさに溝から膝蓋骨が飛び出している状態で、その痛みや違和感で足を挙げているのです。
挙上した足を後ろにピンと伸ばし、自力で元の位置に戻し普通に歩き始めますが、これを続けていると靭帯が切れてしまうことがあり注意が必要です。
次にその7割が遺伝であると言われている股関節形成不全という疾患があります。
これは成長期に股関節の成長が不均等に進んだ結果、骨盤と大腿骨の間に緩みが出て、股関節が亜脱臼するという疾患です。ほとんどの犬種で起こりますが、ジャーマンシェパード、ゴールデンレトリーバー、セントバーナードなどの大型犬種に発症が多いのが特徴です。
痛みは大抵1歳前に現れ、お尻を振って歩く、後ろ足の歩幅が狭い、階段を嫌がる、などの症状が見られます。 厳密に言うと関節・骨の疾患ではありませんが、脊椎の中を通る脊髄に傷がつくことで起こる椎間板ヘルニアは最もよく遭遇する脊髄疾患です。
2つのタイプがあり、そのうちのひとつは軟骨異栄養症を起こす犬種、M.ダックスやフレンチブルドッグなどの犬種で見られます。軟骨異栄養症とは、2歳くらいまでの間に徐々に椎間板が変性して硬く変形し、衝撃を吸収することができなくなる疾患で、そこに大きな衝撃がかかると脊髄を圧迫しヘルニアを発症します。もうひとつのタイプは加齢によって起こる椎間板の変化によるもので、犬種に関わらず発症します。
歩き方、走り方をチェックしてみよう!
うちの子が普段どんな歩き方をしているか、知っていますか?
歩き方は前から、後ろから、横からと方向を変えて観察することが大切です。
何も問題のない正常な歩き方は、4本の足がリズム良く順番に、前から見た時に体の横幅のラインから外れることなく真っ直ぐの方向に足が出ていく歩き方です。
それが例えば、どちらかの方向にお尻が出ている状態であったり、腰が大きく左右に揺れていたり、どちらかの足をかばっていたり、足を上げたまま歩いていたりしていれば、何らかの問題がある可能性があります。
また、脇を持ってそっと持ち上げた時に、後ろ足がクロスしていたり、また逆に足先が外向きになったりしていませんか?O脚も犬ではNGです。
こういった異常がある時は、関節や骨に何らかの異常がある可能性が高く、また子犬の時から見られるようであれば、それは先天的な奇形によるもの、例えば膝蓋骨脱臼や股関節形成不全などが疑われますので、まずはかかりつけの先生に相談してみて下さい!
こういった疾患にかからないようにするにはどうすればいいのかな?
何はともあれ、まずは体重のコントロールです。体重が重くなると常に関節や骨に大きな負担がかかります。
さらに飛び上がり・飛び降りなど瞬間的に大きな負荷がかかると、それをきっかけに発症してしまいます。
また、骨、関節、筋肉に大きな負荷がかかるような過度な運動もお勧めできません。適度な運動を心がけて下さい。
関節や骨の疾患は先天性の奇形によるものが多く、つまり発症しやすい犬種というものがあります。うちの子の犬種の特性、どういった疾患にかかりやすいのか、うちの子にはそのリスクがあるのか、その辺りをきちんと把握し、日常生活の中でしっかり観察していきたいですね!!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。