【column】眼の病気ってどんなもの?症状と対策
2024.11.20
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犬の眼は人の眼に比べると、黒目が大きく、いつもキラキラ輝いています。
でも横から見ると、人の眼よりも眼球が飛び出していて、傷がついたりしないか心配になりますよね。
そんな犬の眼、どんな病気があるのでしょう?
よく見かける眼の病気といえば、まずは結膜と角膜の病気です。結膜は眼球を保護している粘膜で、粘液と少量の涙を生産し、眼の機能を補助し眼球を守る役割を担っています。
結膜は炎症を起こしやすく(結膜炎)、その原因は細菌、ウイルス、真菌、乾燥、アレルギーなど多岐に渡ります。
結膜炎を起こすと結膜が充血し、腫れて浮腫を起こしたり、また色のついたネットリとした目脂が大量に出るようになります。
角膜とは眼球の一番外側にある円形かつ透明な組織で、光を通し、物を見るためのピントを調節する役割を持っています。
いわゆるレンズの役割を果たしているため、体の中で唯一血管を持たない組織でもあります。 角膜は眼の構造上傷が付きやすく、時には潰瘍となって炎症を起こす角膜炎がよく見られます。
角膜に傷がつく原因としては、お散歩中に風が運んできた埃や砂などが眼に入る、細く長い葉っぱなどが眼を掠る、またタオルや絨毯などに顔を擦り付けた際に繊維が眼に入る、など様々なケースがあります。
また小型犬でよく見られるのは鼻涙管狭窄(閉塞)症です。
涙は上下二つの涙点という場所から鼻に流れていきますが、この涙点が元々閉塞していたり、異常に小さかったり、炎症を起こしたりしていると涙を流せなくなります。
涙点から流れなくなった涙は目頭から外に溢れてしまいます(流涙症)。
涙点に管を通して洗浄を行うことで涙が通るようになることもありますが、多くの場合また再発します。
ちなみに溢れた涙が毛に付着し、そこに紫外線が当たることで、ポルフィリンという成分が赤褐色に変化し、涙やけという状態になります。
中〜高齢期になると、水晶体が白濁し眼が白く見えるようになります。いわゆる白内障です。
白内障は遺伝、糖尿病、加齢、外傷など様々な要因で起こります。トイプードルや、アメリカン・コッカー・スパニエル、柴犬などでは若齢期から白内障が見られることがあり、その場合病態は急速に進みます。
加齢によって起こるものは比較的進行はゆっくりです。
その進み方によって初発期、未熟期、成熟期、過熟期に分けられ、成熟期(全体的に白濁している状態)には既に視力はほとんど失われています。
どんな状態になったら病院を受診すればいいのかな?
眼がいつもより少し赤い、目脂の量が多いかも...けれど元気も食欲もあるし、病院に行くほどではないかな、と思われることも多いかと思います。
ですが、目脂や涙の量が多い、目をしょぼしょぼさせている、眼を擦り付けている、左右の眼の大きさが違う、といった場合は病院を受診すべきです。
こういった状態の時は、角膜潰瘍、眼底出血、ぶどう膜炎など、時間をおくと悪化する可能性が高い病気の場合もありますので、すぐにかかりつけの先生に相談しましょう。
また眼の不調に留まらず、くしゃみや鼻水、食欲や元気がないなど全身に症状が出る場合もありますので、様子をよく観察して下さい。
眼の健康を守るために普段からできること
眼の治療は点眼薬がベースとなります。
点眼する時は膝の上に乗せて、正面からではなく後ろから上を向かせて点眼すると抵抗が少なくてすみます。
液体の点眼薬はどうしても難しいということであれば、軟膏タイプの点眼薬もありますので、かかりつけの先生に相談してみて下さい。
人と同じく、犬も加齢によってドライアイになりがちです。
ドライアイは角膜や結膜の病気の原因になることがありますので、生理的食塩水やヒアルロン酸の点眼をすることでドライアイを予防しましょう。
白内障はシニアの犬の多くに見られる疾患ですが、早期に発見できれば点眼やサプリメントである程度進行を抑えることができます。
日光の下で眼球を覗き込み、眼が白濁してきたと感じたら、早めに一度診てもらいましょう。
眼の病気には失明の恐れのあるものも多くあります。早め早めの受診を心がけ、いつまでも美しく健康な眼を保ってあげたいですね。
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。