【column】「おいしい!」はどうやって感じているの?
2025.01.15
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犬たちには毎朝毎晩、ほぼ同じご飯をあげているご家庭が多いかと思います。
私たちはいつも違うご飯を食べているのに、それでいいのだろうかと疑問を持っている方もいらっしゃるかも?犬たちは毎日同じご飯で「おいしい」と感じているのでしょうか?
ところで「おいしい」はどこでどのように感じるのでしょうか?
食べ物を口にした時にそれを最初に感じるのは舌の上にある味蕾と呼ばれる器官です。
味蕾はその字の通り、「味を感じる蕾(つぼみ)」で花の蕾の形をしており、その中にある味細胞が食べ物と反応して味を感じます。
味覚は甘味、旨味、塩味、酸味、苦味、の5種類があります。
この味蕾の数が人にはおよそ10000個あるのに比べ、犬では1700個ほどしかありません。
また、味覚にも偏りがあり、一番敏感に感じられるのは甘味と酸味で、苦味も感じますが一番苦手な味覚、そして塩味はほとんど感じられないと言われています。
ちなみに旨味は感じることはできるものの嗜好に大きく影響しません。
毎日同じご飯をあげる最大の理由はその消化能力にあります。
犬は唾液の中にアミラーゼが含まれないので、口腔内では消化は始まらず、胃に入って初めてペプシンによってタンパク質の分解・消化が始まります。
さらに十二指腸以降小腸内で分泌される胆汁、膵液、腸液のうち消化酵素が含まれるのは膵液だけです。
膵液に消化の中心的な役割を担う様々な消化酵素、アミラーゼ、リパーゼ(脂質分解酵素)、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が含まれています。
このようにそもそもの消化能力が低いので、普段と違うものを食べると消化不良を起こしてしまいます。
また人ほど味覚が敏感でないので、食事の内容・種類に対して欲求は強くありません。
むしろ同じ方が消化管は混乱することなくきちんと消化することができるのです。
より「おいしい」と思ってもらうために
毎日同じごはんの方がいいとはいえ、ずっと同じだと飽きる時がやってきます。
「おいしい」を構成する要素は味覚だけではありません。
犬にとって「おいしい」を決める重要な要素は、香り>食感>味>見た目であり、何より香りが大切です。
普段のごはんにウェットフードや犬用の鰹節、ふりかけなどをトッピングしてもいいですね。
また少し温めてあげるとさらに香りが立つようになります。
食感、という意味ではドライフードをふやかしてあげてもいいですし、ギブル(粒)が大きい場合には少し小さくつぶしてあげてもいいかもしれません。
フードプロセッサーなどでかなり細かくしてウェットフードと混ぜると、いつもと全く違うご飯になり、食いつきも良くなります。
シニアになると屈んで食べるのが辛くなったり、ごはんがお皿の中で滑りやすく途中で食べるのを諦めてしまったりすることがあります。
その子の年齢、床から口までの高さ、マズルの長さなど色々な観点から食器を選んであげるといいでしょう。
でもやっぱりたまにはおいしいものをあげたい!
同じものをあげた方がいいのはわかっていても、それでもやはりたまには違ったものをあげたい!と思ってしまいますよね。
中でも多いのは果物類。今の季節、りんごやみかん、いちごなどが旬の果物ですね。
りんごは消化も良く食べさせやすい果物の筆頭と言えます。みかんは果実を包む内袋は消化が悪いので、それは外して果肉だけあげるといいでしょう。
いちごは表面の粒々が消化しにくいものの比較的食べさせやすい果物になります。
白菜のような葉物は基本的に色が薄めのものであれば大丈夫です。
根菜類も大丈夫ですが、カロリーが高めのものもありますので、あげる量には注意しましょう。
ただアレルギーがある場合には注意が必要です。
アレルゲンそのものでなくても、アレルゲンの形が似たものは同じような反応を示すことがあります。
りんごやいちごも交差反応を起こす可能性がありますので、必ずかかりつけの先生に確認してからあげるようにしましょう。
生きるために、ではなく毎日のごはんを「おいしい」と思ってもらえるよう、できる工夫はしてあげたいですね!
Written by
監修医 小林 充子 先生
麻布大学獣医学部を卒業。在学中は国立保険医療科学院のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2010年に目黒区駒場にてキャフェリエペットクリニックを開業。一頭一頭のタイプに合ったオーダーメイドの対応を信条に総合診療を行う。